新型コロナウイルス感染症の影響に伴う助成金について
2020/04/06
新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている中、事業に影響が出ている会社は少なくありません。
今回は、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う助成金についてご案内致します。
※これらの情報は、令和2年3月31日時点の内容です。今後さらなる要件緩和等により内容が変わる可能性がございますので、ご留意ください。
目次
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症)
雇用調整助成金は、景気の変動によって事業活動の縮小を余儀なくされている中で、労働者を退職させずに休業、教育訓練、出向を通じて雇用維持を図る企業に対する助成金です。
この助成金は、リーマンショックや大規模な天災事変の際等に度々活用されています。
要件はその都度異なり、新型コロナウイルス感染症にかかる雇用調整助成金の特例措置はリーマンショック時より要件が緩和されています。
それでは、雇用調整助成金の要件について見ていきましょう。
(雇用調整助成金は、休業、教育訓練、出向に対し助成されるものですが、今回は「休業」に着目してご案内致します。)
(1)対象労働者
次の①から③を除く雇用保険被保険者(2020/4/1~6/30間は雇用保険加入していない労働者も対象)です。
① 解雇を予告されている方、退職願を提出した方、事業主による退職勧奨に応じた方(離職の日の翌日に安定した職業に就くことが明らかな方を除きます。)
※それらの事実が生じた日までの間は対象労働者として扱われます。
② 日雇労働被保険者
③ 特定就職困難者雇用開発助成金等の支給対象となる方
コロナウイルス感染症以外の場合は、雇用された期間が6か月未満の方も対象外です。
(2)対象となる事業主
① 新型コロナウイルス感染症の影響を受け、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主
② 生産量要件を満たしていること。
③ 休業を実施する場合は、休業規模等要件を満たしていること。
②の生産量要件は、原則として、初回の休業等計画届を提出する月の前月と前年同期に比べ、10%以上減少(2020/4/1~6/30間は5%以上)していることが必要です。
なお、令和2年1月24か時点で事業所設置後1年未満の事業主は、初回の休業等計画届を提出する月の前月と令和元年12月との1か月分の指標で比較します。
③の休業規模等の要件とは、判定基礎期間(原則、賃金計算期間)における休業または教育訓練の実施日の延日数が、対象労働者に係る所定労働延日数の20分の1(大企業は15分の1)以上であること。
つまり、(1)の対象労働者数(事業所の雇用保険被保険者数)×所定労働日数÷20(大企業は15)以上の休業延日数がないと対象になりません。
派遣会社の場合、派遣先の事情により休業が実施されることになるため、休業等規模要件を満たすのは難しいかもしれません。
なお、雇用調整助成金は、直近で解雇や退職勧奨など会社都合退職があった会社も対象になります。
(3)助成金の額
メディアなどでは、「休業手当に対する助成率最大9割」などと報道され、あたかも支払った金額の9割助成と見受けられますが、実際は異なります。
まずは、昨年の労働保険料申告書(年度更新)を用意しましょう。
(1)前年度1年間の雇用保険の保険料の算定基礎となる賃金総額
(2)前年度1年間の1ヶ月平均の雇用保険被保険者数
(3)前年度の年間所定労働日数
助成金における平均賃金は、上記(1)~(3)の数字から平均賃金を算出します。
(1)÷((2)×(3))=助成金上の平均賃金となります。
※なお、労働者に支払う休業手当は、労働基準法第26条に基づく平均賃金(直近3ヶ月分の給与から計算)が必要なので、ご留意ください。
上記の平均賃金に、休業手当等の支払い率を乗じたものが基準賃金となり、それに助成率を乗じたものが1日当たりの助成額単価となります。
計算例)
(1)前年度1年間の雇用保険の保険料の算定基礎となる賃金総額 483,566,000円
(2)前年度1年間の1ヶ月平均の雇用保険被保険者数 340人
(3)前年度の年間所定労働日数 261日
助成金上の平均賃金 483,566,000÷(340人×261日)=5,450円
5450円×85%(休業手当支払い率)=4,633円
1日あたりの助成額単価 4,663円×3分の2=3,089円(但し、上限8,330円)
休業手当の支払い率は、労働基準法第26条では60%であれば問題ございませんが、助成金も60%となってしまいます。
実際に労働者へ支払うべき休業手当と助成額を比較し、貴社にとって最適な率を決めることをお勧めいたします。
雇用調整助成金は、3月初旬に発表され、日に日に要件が緩和されています。
今後の発表にご留意ください。
新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金
新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、小学校等が臨時休業した場合等に、その小学校等に通う子の保護者である労働者の休職に伴う所得の減少に対応するため、正規雇用・非正規雇用を問わず、労働基準法の年次有給休暇とは別途、有給の休暇を取得させた企業に対する助成金です。
助成対象期間は、令和2年2月27日から3月31日までの間でしたが、3月31日に期間を6月末まで延長すると発表されました。
助成額は、特別の有給休暇(年次有給休暇ではない)を付与し、賃金を全額支払った場合に助成されます。
なお、元々予定されていた春休みや土日・祝日にあたる場合などは対象外です。(放課後児童クラブ等の利用を予定されていた場合は、本来施設が利用可能な日)
助成額は、上限8,330円です。
ただし、本人に支払う額が8,330円を超える場合であっても全額支給が必要なので、ご留意ください。
派遣業界への影響
派遣業界は幅広いため、直接影響を受ける業界もあれば、そうでない業界もありますので一概に言い切ることはできませんが、雇用調整を行うにあたり、立場が弱いのは派遣労働者です。コロナの影響が長引くにつれ、派遣契約の打ち切りも多発する可能性があります。
派遣先の都合により派遣契約が中途解除された場合、派遣法第29条の2に基づく雇用安定措置により、派遣先は休業手当または解雇予告手当相当の額の損害を賠償する義務があります。また、派遣先都合の契約不更新や休業の場合も派遣基本契約書などに定めがある場合は、相応の措置を求めることができます。
派遣元は、派遣労働者の雇用を維持するための原資が無いと、法が求める措置を講ずることができません。派遣労働者の雇用安定について、派遣先と派遣元双方で話し合いのうえ、進めていただければと思います。
執筆者紹介
吉田 彩乃 社会保険労務士法人ザイムパートナーズ
大学在学中に社会保険労務士試験合格。一般企業にて人事労務職を経験後、ザイムパートナーズに入所。現在は、副代表に就任し、派遣会社をメインに労務相談、就業規則、教育訓練、派遣許可・更新申請等に関するコンサルティング業務を担当。
社会保険労務士法人ザイムパートナーズ