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労使協定方式への移行にあたって抑えたい3つのポイント

2019/05/27

勤務間インターバル制度とは

いよいよ来年(2020年)4月1日より、改正労働者派遣法が施行され、同一労働同一賃金に向けて、①派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇、②一定の要件(同種の業務に従事する一般の労働者の平均賃金と同等以上の賃金であること等)を満たす労使協定による待遇のいずれかを確保することが義務化されます。
 
本稿では、②の労使協定についてご案内致します。

 

労使協定は、2020年4月1日より前に締結が必要

改正法の施行は、2020年4月1日ですが、施行日をまたぐ労働者派遣契約についても適用されます。
 
例えば、施行日前である2020年2月1日から2020年4月30日までの派遣契約を締結している場合で、施行日から労使協定方式の適用を受けるためには、それまでに労使協定を締結し、派遣契約の変更などを行う必要があります。

 

①労使協定方式導入までに準備すること

  • ステップ1 同種の業務に従事する一般の労働者の平均賃金の算定方法を理解し、自社の派遣労働者の現在の職種と賃金を整理する。
  • ステップ2 職業安定局長通知に示された職種の一般賃金を確認する。
  • ステップ3 賃金テーブルがある場合は、一般賃金と同等以上か確認、賃金テーブルが無い場合は作成が必要です。
    ※賃金テーブル作成と同時に、人事評価制度の整備も必要です。どのような根拠に基づいて賃金等級が決まるのか、合理的かつ客観的な資料をもって説明できるようにしなければならないためです。
  • ステップ4 労使協定の対象となる賃金以外の待遇に係る制度を点検し、是正・整備する。
  • ステップ5 就業規則の整備と労使協定の締結を行い、労働者に周知する。
  • ステップ6 派遣先から教育訓練・福利厚生施設に関する情報を入手する。
  • ステップ7 労使協定で定めた内容と派遣先の福利厚生に関する情報を元に、派遣労働者の待遇を決定する。

 

何と言っても、賃金テーブルと人事評価制度の整備が重要です。
 
ステップ2の局長通知の一般賃金は、毎年6~7月頃に発表される予定ですので、数値が出たら、まず、自社の派遣労働者の職種別賃金と一般賃金と比較し、改善が必要であれば是正し、また、派遣先との派遣料金交渉も今年度中にしておくと良いでしょう。

 

②労働者代表の選出方法

前掲記事「派遣会社の労働者代表、どのように選出する?」でもご案内しましたが、過半数労働組合がない事業所の労働者代表は、使用者側が勝手に決めることはできません。
 
民主的な方法で選出する必要があります。

 

労働者代表が民主的な方法で選出されなかった場合のリスク
せっかく時間をかけて整備した労使協定が無効になり、改正派遣法の原則である「派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇」が有効になってしまいます。
 
労使協定方式の賃金より、派遣先均等・均衡方式の賃金の方が高いと、その分マージンが取れなくなってしまいます。

 

従来は、労働者代表を何となく選出してきた会社も少なくないと思いますが、今年度からは選挙等を行い、公正に選出することが必要となります。

 

③労使協定に記載する事項

労使協定に記載する事項は、次のとおりです。

 

  • ⅰ)労使協定の対象となる派遣労働者の範囲
  • ⅱ)賃金の決定方法
  • ⅲ)賃金以外の待遇の決定方法
  • ⅳ)段階的・体系的な教育訓練の実施
  • ⅴ)その他の事項(有効期間等)

 

就業規則も変更が必要

労使協定で定めた内容を就業規則に反映させます。
 
派遣労働者の賃金・待遇にかかわることなので、就業規則に反映し、常時10人以上の労働者がいる事業所は、労働基準監督署へ届け出が必要です。

 

①労使協定と就業規則は、労働者に周知が必要

今回の労使協定は、ⅰ)書面交付、ⅱ)派遣労働者が希望した場合はFAXまたは電子メール、SNS、ⅲ)社内のイントラネットのいずれかで行う必要があります。
 
就業規則などの周知方法で比較的多いのは「事業所の見やすい場所での掲示又は備え付け」ですが、協定の概要についてⅰ)またはⅱ)と併せて周知する場合に限られますので、ご留意ください。

 

②労使協定の保存期間

労使協定は、有効期間が終了した日から3年を経過する日まで保存が必要です。

 

労使協定の内容は労働者派遣事業報告書に添付が必要

労使協定方式を採用した場合の労使協定は、毎年度6月30日までに提出する事業報告書に労使協定を添付することが必要です。
 
また、対象となる派遣労働者の職種ごとの人数、職種ごとの賃金額の平均額を報告する必要があります。

 

職種ごとの賃金額の平均を出すため、一般賃金を下回った数値が記載されていると法違反であることがわかってしまいます。
 
労使協定内容を遵守していない場合や、公正な評価に取り組んでいないと判断されると、労使協定方式は無効となり、原則どおり派遣先均等・均衡方式が有効となりますので、くれぐれも留意が必要です。

労使協定方式を採用すると社外への情報提供も必要

①自社のホームページなどで情報提供

派遣会社はマージン率などの情報をインターネットで公開することが義務付けられていますが、ⅰ)労使協定締結の有無、ⅱ)締結している場合は、対象派遣労働者の範囲、協定の有効期間の終期の情報を提供することが必要です。
 
※厚生労働省の「人材サービス総合サイト」に掲載することも可能です。

 

②労働者派遣契約書などの書式も変更

労働者派遣契約書や派遣先通知書、派遣先・派遣元管理台帳や就業条件明示書にも、対象派遣労働者であるか、対象である場合は労使協定の有効期間の終期の記載が必要となります。
 
前述のとおり、施行日である2020年4月1日より改正派遣法が施行されます。2020年4月1日をまたぐ派遣契約書等は、派遣契約内容の変更が必要となりますので、ご留意ください。

 

執筆者紹介

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吉田 彩乃  社会保険労務士法人ザイムパートナーズ

大学在学中に社会保険労務士試験合格。一般企業にて人事労務職を経験後、ザイムパートナーズに入所。現在は、副代表に就任し、派遣会社をメインに労務相談、就業規則、教育訓練、派遣許可・更新申請等に関するコンサルティング業務を担当。
社会保険労務士法人ザイムパートナーズ

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