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労働局による派遣先調査が増加!気になる現状と実態は?

2019/04/24

勤務間インターバル制度とは

2015年9月の労働者派遣法改正により、(旧)特定労働者派遣事業が廃止され、経過措置期間も昨年9月をもって終了しました。
 
許可制となった労働者派遣事業において、適正な事業運営を行うべく、都道府県労働局による調査が増加しています。
 
今回は、調査のポイントについて、ご案内いたします。

 

2019年の重点課題は?

各都道府県の重点課題は、厚生労働省が策定した「地方労働行政運営方針」に基づき、各都道府県労働局が、各局内の管内事情に即した重点課題・対応方針などを盛り込んだ行政運営方針を策定し、計画的な行政運営を図ることとしています。

 

平成31年度地方労働行政運営方針には、以下の記載があります。

    派遣労働者の法定労働条件の履行確保を図るため、労働基準関係法令の適用の特例を含め、派遣元事業主及び派遣先に対し労働基準関係法令を周知するとともに、その遵守の徹底を図る。

 

上記の方針を踏まえ、愛知労働局は、労働局内各部、労働基準監督署、ハローワーク及び他の労働局の需給調整事業担当部署との連携を図りつつ、派遣元事業主、派遣先及び請負事業主、発注者等に対する厳正な指導監督に取り組むとしています。
 
特に、「雇用安定措置等の制度の適正な履行」、「許可を取得しなかった(旧)特定労働者派遣事業主が、無許可派遣や偽装請負が行われないよう、重点的に取り組む」としています。
 
他の労働局も同様の方針を策定しています。

 

調査では、何を確認される?

派遣元事業主

愛知労働局による2019年1月末時点の個別指導監督状況によると、派遣元への文書指導率は、35.9%となっており、「派遣労働者への就業条件の明示」、「派遣先への通知」、「派遣期間抵触日通知がない派遣契約の締結」の順に指導対象となっているようです。

 

調査の際は、主に以下の資料を確認されます。

  • ① 派遣先からの抵触日通知書
  • ② 労働者派遣個別契約書(基本契約書、派遣先カレンダー等含む)
  • ③ 労働者に交付した労働条件通知書及び就業条件明示書の写し
  • ④ 派遣先通知(派遣先へ派遣労働者の氏名等を通知した書面)の写し
  • ⑤ 派遣元管理台帳
  • ⑥ 派遣先からの就業実績表(タイムシート)
  • ⑦ 派遣元事業所の時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定届)
  • ⑧ マージン率などの情報提供に係る資料
  • ⑨ 待遇に関する事項等の説明資料
  • ⑩ キャリアアップ教育訓練関係資料
  • ⑪ 雇用安定措置関係資料

調査時に慌てることの無いよう、法定で定められた書類の確認、記載事項等の不備・漏れが無いか確認し、整備しておきましょう。

 

派遣先事業主

愛知労働局による2019年1月末時点の個別指導監督状況によると、派遣先への文書指導率は、77.5%と高くなっており、主な指導対象事項は、「派遣先管理台帳」、「派遣期間抵触日の通知」となっているようです。

調査の際は、主に以下の資料を確認されます。

 

  • ① 抵触日通知書
  • ② 意見聴取通知書(3年を超えて派遣受入期間制限のある労働者派遣を受けようとする場合)
  • ③ 労働者派遣個別契約書(基本契約書、派遣先カレンダー等含む)
  • ④ 派遣先管理台帳
  • ⑤ 就業実績表(タイムシート)

 

特に、就業実績表は、指導率が高い傾向にあります。理由は、派遣先のタイムカードや勤怠システムのみで管理しており、派遣法が求める事項を満たしていないことが理由です。
 
ちなみに、就業実績表は、以下の項目を記載する必要があります。

 

    (就業実績表に記載が必要な項目)

  • ① 派遣労働者氏名
  • ② 派遣先事業所の名称
  • ③ 就業場所
  • ④ 組織単位
  • ⑤ 就業日、就業時間、休憩時間
  • ⑥ 業務の種類

 

派遣先は、1ヶ月ごとに1回以上、一定の期日を定めて派遣労働者ごとに、「就業実績表」と「苦情相談等連絡表」の写しを派遣元事業主に送付することが義務付けられています。
 
今一度、自己チェック等をして、現状を確認することをお勧めいたします。
 
また、抵触日通知で指導を受ける事業主は、抵触日通知を全く行っていない訳ではなく、初回の個別契約締結時や抵触日に変更があった際は通知しているが、「派遣契約更新時」や「既に取引関係にある派遣元事業主と新たな個別契約締結時」には通知していないことが違法とされ、是正勧告を受けるケースが多々あります。
 
記載内容は同じでも、派遣個別契約を締結の都度、抵触日通知が必要になりますので、留意しておきましょう。

 

まとめ

今回は、派遣元・派遣先における調査についてご案内しましたが、請負事業も行っている会社は、さらに注意が必要です。
 
IT業界における多重下請構造により、請負・準委任・委託契約等と称しつつ、実態は多重派遣であるケースが少なくありません。
 
特に、東京労働局は、「情報提供を含め様々な端緒をもとに、業務請負等の状況を把握し、業務請負等と称しつつ実態として労働者派遣の形態で業務を行っている場合(偽装請負)や、複数の事業者による労働者供給が行われている(多重派遣)場合には、行政処分も含め、厳正に対処する。」旨の方針を示しています。
 
来年は、同一労働同一賃金に関する改正派遣法施行が施行されます。
 
今年は賃金制度や評価制度を整えるための準備期間でもありますので、書式や社内運用についても見直すことをお勧めいたします。

 

執筆者紹介

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吉田 彩乃  社会保険労務士法人ザイムパートナーズ

大学在学中に社会保険労務士試験合格。一般企業にて人事労務職を経験後、ザイムパートナーズに入所。現在は、副代表に就任し、派遣会社をメインに労務相談、就業規則、教育訓練、派遣許可・更新申請等に関するコンサルティング業務を担当。
社会保険労務士法人ザイムパートナーズ

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