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派遣会社の労働者代表、どのように選出する?
~案内文例付き~

2019/04/17

労働者代表選出

労働者代表を選出する場面とは?

会社と従業員の間で労使協定を交わすことが法的に求められる場面では、労働組合がない会社においては、従業員の過半数を代表する者(以下、過半数代表者)を選定する必要があります。
 
2019年4月1日より改正労働基準法が施行されていますが、基準法を補完する労働基準法施行規則第6条の2に、過半数代表者となるべきものの条件が2つ挙げられています。
 
①②を両方とも満たすことが必要です。これは派遣会社であっても同じです。

    過半数代表者の2つの要件
    ①いわゆる管理監督者でない者であること。
    ②法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であって、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと。

 

ちなみに、過半数代表者を選出する必要があるときですが、労働基準法においては下記の場面が規定されています。

 

    18条第2項(いわゆる社内貯金を実施するとき)
    24条第1項(賃金から控除するものがあるとき)
    32条の2第1項(1カ月単位の変形労働時間制)
    32条の3第1項(フレックスタイム制の実施)
    32条の4第1項・第2項(1年単位の変形労働時間制)
    32条の5第1項(1週間単位の変形労働時間制)
    34条第2項(休憩の一斉付与をしない場合)
    36条第1項・8項・9項(時間外および休日の労働。いわゆる36協定)
    37条第3項(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
    38条の2第2項(いわゆる事業場外業務における時間計算)
    38条の3第1項(専門業務型の裁量労働制)
    38条の4第2項(企画業務型の裁量労働制)
    39条第4項(時間単位での有給休暇を付与するとき)
    39条第6項(有給休暇のうち5日を超える部分の時期指定付与)
    39条第9項(有給休暇使用時の賃金額を健康保険の標準報酬月額の30分に1を基準とするとき)
    90条第1項(就業規則の作成・変更)

 

他にも育児介護休業法の適用において、適用除外規定(入社1年未満の従業員を労使協定の締結により除外すること等ができます。)を労使協定で定めるときや労働者派遣法に定める事業所単位の期間制限を延長する際の意見聴取(派遣先で実施)においても必要となります。

 

過半数代表者を、会社が勝手に決めてはいけない?

上記の過半数代表者の2つの要件②に、『使用者(会社)の意向に基づき、選出されたものでないこと』という記載があります。
 
この記載は今回の労働基準法改正に合わせて、文言が加えられた箇所です。
 
端的にいえば、従業員であればだれでも立候補することができ、会社が決めた候補者が自動的に過半数代表者に就任するということはできません。
 
 
会社が候補者を推薦する(従業員にアナウンスする)ことは問題ありませんが、他の立候補者を排除することは許されません。
 
正社員、アルバイト、有期雇用者、定年後の再雇用従業員、出向者も含めた、全従業員に対して何らかの通知を出し、立候補を募り、選挙(投票・挙手など。選挙の方式は現状問われません。)をすることが理想です。
 
 
ただし、実務的には立候補者の成り手がいないことも考えられるため、会社が候補者としてふさわしい人を案内することも多いと思われます。
 
もちろん、結果としてその候補者が労働者代表となることは法的に問題はありません。
 
会社として必ずやるべきことは、全従業員にアナウンスし、かつ別の候補者の受け入れや不信任を申し出ることができる環境を整えることです。
 
書面を送ることが難しい場合は、誰もが目にすることのできる場所(掲示板・社内イントラネット等)に開示することも良いと考えられます。
 
現時点では、選出方法や周知方法を一律に定めているわけではないので、その会社の状況に応じた方法を取ることになります。
 
例えば、下記のような通知を全従業員に送ることで、立候補者が他にいないかを確認する方法も一つでしょう。
 
なお、派遣されているスタッフは、派遣元での従業員として取り扱われるため、派遣先で立候補・異議を申し出ることはできません。

 
案内文例PDFダウンロード
 

派遣元会社においては、内勤の従業員だけでなく、雇用するすべての派遣スタッフも立候補することができますし、立候補を拒絶することはできません。
 
ただし、過半数代表者としての役割を担ってもらう時間は、勤務時間内である必要はないため、勤務時間外で行うときは事前にその旨をアナウンスしておいた方が良いでしょう。
 
なお、勤務時間外で行うときに賃金を支払うことは法定化されていませんが、労働基準法施行規則第6条の2には、過半数代表者が労使協定等に関する事務を円滑に遂行することができるよう必要な配慮を行わなければならないという記載もあるため、過半数代表者が協力しやすい環境は整備することが望ましいといえます。

 

執筆者紹介

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奥田 正名 社会保険労務士法人ザイムパートナーズ

慶應義塾大学商学部卒業後、税理士事務所勤務を経て、1998年独立開業。税理士部門を2005年に、社労士部門を2017年に法人化・代表就任。派遣会社に特化した税理士・社会保険労務士として、派遣会社の設立・消費税の節税プランニング、働き方改革法に沿った派遣会社の運営相談など多面的なコンサルティングを担当。
社会保険労務士法人ザイムパートナーズ

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