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派遣社員の住所や電話番号等の個人情報を派遣先に提供できるか?

2019/08/07

勤務間インターバル制度とは

派遣先から派遣社員の個人情報を開示するよう依頼を受けるシーンがあると思います。
 
派遣会社としてどのように対応すべきか、まとめてみました。

 

派遣先に提供可能な個人情報

派遣先に提供可能な個人情報は、派遣通知書に記載されている情報のみです。
 
具体的には、次の5つになります。

 

  • 1.氏名
  • 2.性別
  • 3.年齢に関する事項(18歳未満の場合は年齢、60歳未満(内45歳以上60歳以上か)、60歳以上か)
    ※生年月日は原則NGです。
  • 4.雇用期間
  • 5.健康保険・厚生年金・雇用保険加入の有無
    ※被保険者証のコピー等を提示する場合は、派遣社員の同意が必要です。同意が得られなければ、生年月日、年齢(18歳未満を除く)を黒塗りし、確認後は派遣元へ返却が必要。

 

派遣先に個人情報を提供してはいけない理由

派遣社員の雇用主は派遣会社であり、派遣先は指揮命令権があるのみです。
 
個人情報保護の観点から、受け入れている派遣社員の個人情報を派遣先に開示する理由はありません。
 
よくある事例では、守秘義務の関係で、派遣先が派遣社員に直接誓約書の提出を求めるケースがあります。
 
なかには、署名欄に氏名の他、住所や連絡先など個人情報の記載を求める場合があります。
 
しかしながら、機密情報保持契約は、基本的に派遣先と派遣会社との間、及び派遣会社と派遣社員の間で取り交わされるものであり、派遣先の機密情報保持については、これらでカバーされます。
 
よって、派遣先が派遣社員に直接誓約書を求める理由がないことになります。
 
したがって、派遣先が派遣社員に直接個人情報の開示を求めることはNGです。
 
どうしても必要な場合は、派遣元に利用目的を明確にしたうえで個人情報提供の依頼をし、派遣社員の同意を得てから開示してもらうようにしましょう。

 

よくあるご質問


 

    【Q1】 派遣先から外国籍の派遣社員の在留カードのコピーを提出して欲しいと依頼があったが、提出しても良いか?

 

    【A1】 NGです。不法就労防止のための措置として確認を求めていると思われますが、それは派遣社員の雇用主である派遣会社が確認すべき事項ですので、派遣先は開示を求めることはできません。

 

不法就労助長罪は派遣元だけでなく派遣先にも適用されるケースはありますが、派遣先が適用されるのは、不法就労であることを知っていたにも関わらず派遣社員を受け入れている場合に限られます。
 
したがって、派遣会社が在留資格・在留期限等をしっかり確認していれば良いことなので、派遣先から開示を求められた場合は、派遣会社で定期的に確認しているため、提出は不要であることを伝えましょう。

 

    【Q2】 派遣先から緊急時の連絡先を教えてほしいと連絡先の開示を求められた場合

 

    【A2】 派遣社員本人の同意が得られなければNGです。緊急時には、派遣会社を通じて派遣社員に連絡する旨を派遣会社に伝えましょう。

 

    【Q3】 派遣契約に先立ち派遣社員の家族や健康情報について開示を求められた場合

 

    【A3】 NGです。ただし、紹介予定派遣の場合で、派遣社員を直接雇用することを前提として求める場合はOKです。

 

例えば、妊娠等により派遣契約の途中で派遣社員が交代するのを避けたいために、派遣先から情報提供を求められるケースがあります。
 
ですが、紹介予定派遣でなく通常の派遣の場合、派遣先が派遣社員の健康情報や家族情報を開示させるには、そのような理由は認められません。
 
派遣先にどのような社員を派遣するかは、派遣会社が決めることです。
 
健康情報や家族情報に不安があるのであれば、その目的を派遣会社に伝え、的確な社員を派遣してもらうようにしましょう。

 

派遣先は派遣社員を指名できません

上記のように、派遣社員の個人情報について複数のケースを記載しましたが、個人情報の問題のほかにも、労働者派遣法で禁止されている「特定目的行為」に該当する可能性も少なからずあります。

 

    労働者派遣法第26条6項
    労働者派遣(紹介予定派遣を除く。)の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない。

 

特定目的行為とは、派遣先が労働者派遣に先立って受け入れ予定の派遣社員と面接したり、履歴書を提出させたり、若年者や男性(女性)に限るといった行為をすることを禁止しています。
 
事前に家族情報や健康情報、学歴や職歴等をヒアリングし、派遣社員として受け入れるかどうか判断する場合は、特定目的行為に該当しますので、くれぐれも留意しましょう。

 

個人情報の保護に関する違反

労働者派遣法は、個人情報の保護に関する規定に違反した場合、派遣元事業主は、許可取消し(法第14条第1項)、事業停止命令(法第14条第2項)、改善命令(法第49条第1項)の対象となることを規定しています。
 
お得意先でも、派遣社員の個人情報提供の求めには法律違反となることを説明し、了承いただくことをお勧めいたします。

 

執筆者紹介

執筆者画像

吉田 彩乃  社会保険労務士法人ザイムパートナーズ

大学在学中に社会保険労務士試験合格。一般企業にて人事労務職を経験後、ザイムパートナーズに入所。現在は、副代表に就任し、派遣会社をメインに労務相談、就業規則、教育訓練、派遣許可・更新申請等に関するコンサルティング業務を担当。
社会保険労務士法人ザイムパートナーズ

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