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同一労働同一賃金~労使協定方式と賃金テーブルについて~

2019/10/08

製造業減益による派遣業界への影響とは

来年2020年4月1日より改正される労働者派遣法について、今回は、労使協定方式と賃金テーブルについてご案内致します。

 

労使協定方式には賃金テーブルが必要

労使協定方式を採用する場合、賃金構造基本統計調査や職業安定業務統計等の公的統計に基づく「同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金額」(以下、「一般賃金」といいます)と同等以上の賃金を支給することが必要です。
 
まずは、この基準をクリアすることが大切なのですが、これだけでは足りません。
 
労使協定方式には、以下の要件があるためです。

 

①派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力又は経験等の向上があった場合に、通勤手当等を除く職務の内容に密接に関連して支払われる賃金が改善されること
 
②派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力又は経験等を公正に評価して賃金を決定すること

 

派遣労働者が、賃金統計の何年目に該当するかは、労使の決定に委ねられているとはいえ、客観的な基準が必要であることと公正に評価して賃金を決定することが求められています。
 
特に登録型派遣の場合、整備された賃金テーブルがある派遣会社は少ないようです。
 
中には、派遣料金の〇%を基本時給として支払っているケースもあります。
 
同じ職務内容でも、派遣先により給与が異なることは、多々あります。
 
ですが、今回の改正により、賃金の決定方法を明確にする必要がありますので、賃金テーブルを設定し、皆の足並みを揃える必要があります。
 
なぜならば、派遣会社は、派遣労働者から求めがあった場合、賃金の決定方法について説明する義務があるからです。

 

賃金テーブルの種類(例示)

賃金テーブルは、次の3パターンあります。

 

パターン① 職務内容等の向上があった場合に追加の手当を支給

 

 

派遣労働者の勤務評価の結果、同じ職務内容(同じランク)であっても、派遣労働者の職務に係る経験の蓄積、能力の向上があった場合に、例えば基本給や手当額の1~3%の範囲で追加の能力手当を支給する方法です。

 

例)等級はDランクに該当するが、勤務評価がA評価(※)の場合
※A評価は基本給の3%、B評価は基本給の2%、C評価は基本給の1%、
D評価は基本給の0%、E評価は基本給の-1%を能力手当として加算

 

1年目 基本給・賞与1,100円+能力手当0円=1,100円
2年目 基本給・賞与1,100円+能力手当30円(1,000円×3%A評価)=1,130円
3年目 基本給・賞与1,100円+能力手当50円
(現行能力手当30円+新たな能力手当(1,000円×2%B評価))=1,150円

 

この賃金テーブルを採用するメリットは、枠にとらわれず、柔軟に賃金決定ができることです。
 
現行の時給をそのままスライドさせやすいことも利点です。
 
但し、能力手当の上限を定めておかないと、上位ランクよりも給与が高くなる可能性があり、昇格に対するモチベーションアップに繋がらない可能性もありますので、注意が必要です。

 

パターン② 職務内容等の向上があった場合に向上に応じた基本給・手当等を支給

 

 

派遣労働者の勤務評価の結果、同じ職務内容(同じランク)であっても、派遣労働者の職務に係る経験の蓄積、能力の向上があった場合に、基本給や手当額自体を増額して支給する方法です。

 

賃金テーブルを作成することで、各ランクの上限と下限を定めることができます。
 
また、昇格後の給与額が明確になるため、昇格に対するモチベーションアップに繋がる可能性があります。

 

パターン③ 職務内容等の向上があった場合は、高度な業務に係る派遣就業機会を提供

 

 

パターン①と異なる点は、同ランク内の昇給の仕組み(パターン①でいう能力手当の支給)が無く、昇格(ランクアップ)ありきで賃金の改善を図る方法です。
 
但し、ランクアップ後の派遣就業機会を提供できないときは、パターン①や②のような同ランク内での昇給が必要です。
⇒Dランクの1,100円のまま賃金を据え置く方法は、法律上の要件を満たすとはいえません。

 

派遣労働者に対する説明義務がある

派遣会社は、派遣労働者から賃金の決定について説明を求められた場合は、応じる義務があります。
 
具体的には、次の内容に基づき決定されていることを説明する必要があります。

 

  • 派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金の額と同等以上であるものとして労使協定に定めたもの
  • 労使協定に定めた公正な評価

 

また、賃金や福利厚生施設以外の待遇について、派遣元の内勤スタッフとの間で不合理な相違が無く決定されていること等についても、説明する義務があります。
 
例えば、慶弔休暇、慶弔見舞金、特別休暇等の取扱いに不合理な差があってはいけません。

 

なお、説明の際は、派遣労働者がその内容を理解できるよう、資料を活用し、口頭により説明することが基本とされています。ただし、説明すべき事項を漏れなく全て記載した派遣労働者が容易に理解できる内容の資料を用いる場合は、資料交付の方法も認められています。

 

ここで派遣労働者が納得できる説明ができないと、派遣労働者は裁判外紛争解決手続(行政ADR)を利用して、都道府県労働局に紛争の解決の援助を求めることができます。
 
このようなトラブルにならないよう、客観的な評価に基づく評価基準と賃金テーブルを整備し、運用していきましょう。

 

執筆者紹介

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吉田 彩乃  社会保険労務士法人ザイムパートナーズ

大学在学中に社会保険労務士試験合格。一般企業にて人事労務職を経験後、ザイムパートナーズに入所。現在は、副代表に就任し、派遣会社をメインに労務相談、就業規則、教育訓練、派遣許可・更新申請等に関するコンサルティング業務を担当。
社会保険労務士法人ザイムパートナーズ

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