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任意とされている4年目以降のキャリアアップ教育訓練について

2019/06/05

勤務間インターバル制度とは

派遣会社は、労働者派遣法第30条の2において、入社3年目まで毎年1回以上のキャリアアップに資する教育訓練の機会を提供することが義務付けられていますが、入社4年目以降の訓練機会の提供時期は事業主の裁量に委ねられています。
 
「義務付けられていることだけ実施すればいいのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。
 
今回は、入社4年目以降のキャリアアップ教育訓練についてまとめてみました。

 

キャリアアップに資するとは?

キャリアアップに資するとは、例えば、以下のことをいいます。

 

    ・派遣スタッフの賃金などの処遇が上がること
    ・派遣スタッフから正社員として直接雇用されること
    ・職務遂行能力・技術的レベルを上げること

 

キャリアアップに資する教育訓練計画を策定するにあたり、上記のことを念頭に置く必要があります。
 
会社が掲げた目的や目標を達成できる人材を育てるには、いつまでに、どのような教育を行うのかということを具体的に考える必要があります。

 

教育訓練の実施方法

実施方法として、例えば以下のような取り組みが考えられます。

 

    ・e-ラーニングの活用
    ・社内での講座の開催
    ・外部の訓練期間を利用
    ・派遣先における計画的なOJT※
    ※派遣先に協力を求める場合は、労働者派遣契約等において具体的な時間数や必要とする知識の付与や訓練方法等について記載する必要があります。通常業務で行われるOJTではありません。

 

最近は、派遣スタッフの利便性を考慮し、自宅でも受講可能なe-ラーニングの活用が増えています。
 
改正から3年以上経過していますが、取り組めていない会社もまだあるようです。
 
許可更新時に過去に提出した事業報告書記載の教育訓練実績が許可の参考材料にもなりますので、まだ取り組めていない会社は、すぐにでも導入を進めましょう。

 

入社4年目以降もキャリアアップ教育訓練が必要な理由

労働者派遣事業の許可要件の一つに、入社4年目以降もキャリアアップ教育が必要であることが、示されています。

 

    労働者派遣事業関係業務取扱要領(平成31年4月厚生労働省職業安定局)抜粋
     
    第3の1の(8)許可要件(許可の基準)
    ロの②の(イ)のd
    (a)派遣労働者全員に対して入職時の教育訓練は必須であること。また、教育訓練は、少なくとも最初の3年間は毎年1回以上の機会の提供が必要であり、その後も、キャリアの節目などの一定の期間ごとにキャリアパスに応じた研修等が用意されていること。
     
    (b)実施時間数については、フルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣労働者一人当たり、少なくとも最初の3年間は、毎年概ね8時間以上の教育訓練の機会の提供が必要であること。
     
    (c)派遣元事業主は上記の教育訓練計画の実施に当たって、教育訓練を適切に受講できるように就業時間等に配慮しなければならない。

 

派遣事業の許可要件として示されている以上、これを無視するわけにはいきません。
 
キャリアアップに資する教育訓練計画を策定し、実際に対象者が生じたら実行しましょう。
 
また、上記のみならず、無期雇用者においても入社4年目以降の教育訓練が必要です。
 
労働者派遣法第30条の2後段において、以下の規定があります。

 

    この場合において、当該派遣労働者が無期雇用派遣労働者(期間を定めないで雇用される派遣労働者をいう。以下同じ。)であるときは、当該無期雇用派遣労働者がその職業生活の全期間を通じてその有する能力を有効に発揮できるように配慮しなければならない。

 

派遣スタッフは、正社員に比べて職業能力形成の機会が乏しいことが義務化の背景にあります。
 
そのため、無期雇用派遣スタッフも正社員と同じように教育訓練を行い、職業能力形成の機会を提供することが必要とされています。

 

入社4年目以降の教育訓練カリキュラム

以下は無期雇用派遣スタッフの例示ですが、入社4年目以降の有期雇用派遣スタッフにも、これに準じた訓練を行うことが望ましいです。

 

    労働者派遣事業関係業務取扱要領(平成31年4月厚生労働省職業安定局)抜粋
     
    第7の3の(3)段階的かつ体系的な教育訓練について
    ホ 無期雇用派遣労働者に対しては、長期的なキャリア形成を念頭に置いた内容であること
    無期雇用派遣労働者については、派遣労働者以外の期間の定めなく雇用されている労働者と同様に、長期的なキャリア形成を念頭において教育訓練を行う必要がある例えば同一の派遣先に長期間勤務した者については、職場のリーダーとして役割が期待されるので、コミュニケーション能力やマネージメントスキルに係る研修を行うことが考えられる。

 

上記からわかるように、一般企業の正社員と同様のキャリア像が求められています。
 
入社3年目までは社会人マナーや業務遂行能力を磨くことが求められ、入社4年目以降は部下とのコミュニケーション力、リーダーシップ、高度の専門的知識レベル、判断力が必要な業務遂行ができるように教育訓練を行うことが必要です。

 

受講時間に下限はあるの?

入社4年目以降は事業主の裁量に委ねられているため、最低〇時間以上といった下限はありません。
 
会社が掲げた目的や目標を達成するために必要な時間となります。
 
ちなみに、厚生労働省が交付しているマニュアルの記載例には、4年目以降の計画が定められており、訓練時間は4時間とされています。

 

まとめ

派遣会社として派遣スタッフをただ派遣先に送り出すだけではなく、雇用者として派遣スタッフの人材育成、雇用を維持することが求められています。
 
制度としてせっかく教育訓練計画を作成するのであれば、中途半端な教育を行うよりも本格的な訓練計画を作成し、スキルの高い派遣スタッフに育てることをお勧めします。
 
スキルの高いスタッフであれば、必然と派遣料金も高く設定することができますし、会社のネームバリューも上がります。ぜひご検討いただけたらと存じます。

 

執筆者紹介

執筆者画像

吉田 彩乃  社会保険労務士法人ザイムパートナーズ

大学在学中に社会保険労務士試験合格。一般企業にて人事労務職を経験後、ザイムパートナーズに入所。現在は、副代表に就任し、派遣会社をメインに労務相談、就業規則、教育訓練、派遣許可・更新申請等に関するコンサルティング業務を担当。
社会保険労務士法人ザイムパートナーズ

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