令和2年4月1日施行の喫煙制限と派遣労働者について
2019/12/19
令和2年4月1日に改正健康増進法が全面施行され、原則として屋内での喫煙は禁止されます。
会社としてどのように対策すべきか、ご案内致します。
目次
改正健康増進法は企業も対象
すでに、学校や病院、児童福祉施設等及び行政機関(第一種施設)は、子どもや患者等に特に配慮が必要なため、令和元年7月1日より改正法が施行されています。
それ以外の施設(第二種施設)においても、令和2年4月1日より全面的に施行され、屋内での喫煙は原則としてできなくなります。
改正法が規定する「多数の者が利用する施設」とは、2人以上の者が同時に、又は、入れ替わり利用する施設をいい、事務所や工場等の屋内職場も該当することになります。
喫煙する場合は、以下の3つのいずれかに限られます。
①屋内禁煙(屋外は喫煙可。但し、周囲への配慮は必要)
②喫煙専用室設置
③加熱式たばこ専用の喫煙室設置
従来許されてきたタバコを吸いながらの就業やエリア分煙、時間帯分煙等は認められなくなります。
違反すると都道府県知事等による指導・勧告・命令の対象となり、最終的に50万円以下の過料となる可能性がありますので、ご留意ください。
職場の受動喫煙防止対策
職場における受動喫煙防止のためのガイドライン(令和元年7月1日 基発 0701 第1号)によりますと、職場の受動喫煙防止対策を効果的に進めていくためには、衛生委員会や安全衛生委員会等の場を通じて、労働者の受動喫煙防止対策についての意識・意見を十分に把握し、事業場の実情を把握したうえで、適切な措置を決定することとされています。
具体的には、次のような取り組みを組織的に進めることが必要です。
①推進計画の策定
受動喫煙防止対策を推進するための計画を策定する。
例えば、安全衛生に係る計画、衛生教育の実施計画、健康保持増進を図るため必要な措置の実施計画等に、職場の受動喫煙防止対策に係る項目を盛り込む方法があります。
受動喫煙防止対策が講じられていない会社は、目標達成時期(令和2年3月31日以前)と措置内容を検討する必要があります。
②担当部署の指定
企業全体または事業場の規模等に応じ、受動喫煙防止対策の担当部署や担当者を指定し、受動喫煙防止対策に係る相談対応等を実施させるとともに、各事業場の受動喫煙防止対策の状況について定期的に把握、分析、評価等を行い、問題がある職場について改善のための指導を行わせるなど、受動喫煙防止対策全般についての事務を所掌させることが必要です。
③労働者の健康管理等
受動喫煙防止対策の状況を衛生委員会等で調査審議事項とし、産業医の職場巡視においても留意することとされています。
④標識の設置・維持管理
施設内に喫煙専用室や指定たばこ専用喫煙室など喫煙可能な場所を定める場合は、場所の出入口と施設の主な出入口の見やすい箇所に必要な事項を記載した標識を掲示することが義務付けられています。
標識例については、厚生労働省のホームページに掲載されていますので、ご参照ください。
⑤意識の高揚及び情報の収集・提供
労働者への受動喫煙防止のための教育や相談対応等により意識の高揚を図ること。
また、担当部署等は、他の事業場の対策事例や受動喫煙による健康への影響等に関する調査研究等の情報を収集し、適宜衛生委員会等に提供することとされています。
⑥労働者の募集及び求人の申込み時の受動喫煙防止対策の明示
労働者の募集や求人申し込み時に、就業場所における受動喫煙を防止するための措置に関する事項の明示が必要です。
※派遣労働者は、派遣先の措置内容を明示する必要がありますので、ご留意ください。
措置内容としては、例えば以下の事項が挙げられています。
・施設の敷地内又は屋内を全面禁煙としていること。
・施設の敷地内又は屋内を原則禁煙とし、特定屋外喫煙場所や喫煙専用室等を設けていること。
・施設の屋内で喫煙が可能であること。
事業場の受動喫煙防止措置内容を、求人広告や労働条件明示書に記載することが考えられます。
派遣労働者は、待遇に関する事項等の説明時または就業条件明示書に記載しておくのも良いでしょう。
令和2年4月1日より就業条件明示書の必要記載事項が変わりますので、このタイミングで変更しておくことをお勧めいたします。
⑦妊婦等への特別な配慮
妊娠している労働者や呼吸器・循環器等に疾患を持つ労働者、がん等の疾病を治療しながら就業する労働者、化学物質に過敏な労働者など、受動喫煙による健康への影響を一層受けやすい懸念がある方に対して、特に配慮が必要です。
⑧20歳未満の労働者に対する配慮
健康増進法は、喫煙可能な場所に20歳未満の者を立ち入らせることを禁じています。
例えば喫煙ルームの清掃作業など業務の一環として立ち入らせるのもNGとされていますので、要注意です。
また、健康増進法において適用除外の場所となっている喫煙可能な宿泊施設や職員寮の個室、老人ホームなどの入居施設の個室、営業や配達等の業務車両内等においても、20歳未満の者が喫煙可能な場所に立ち入らないよう措置を講じる必要があります。
⑨20歳以上の労働者に対する配慮
20歳以上の労働者においても、受動喫煙を防止するため、受動喫煙を望まない労働者が喫煙区域に立ち入る必要の無いよう以下の配慮が必要とされています。
・勤務シフトや勤務フロア、同線等を工夫
・喫煙ルームの清掃時には室内に喫煙者がいない状態で換気した後に清掃
・業務車両内において同乗者の意向に配慮
助成金の活用
受動喫煙防止対策において、喫煙ルームを設置・回収や屋外喫煙所(閉鎖系)の設置・改修、換気装置などの設置・改修する場合は、費用の一部が支援される「受動喫煙防止対策助成金」があります。
義務化される前の今年度限りの助成金となりますので、喫煙ルーム等の設置・回収を予定されている方は、ぜひ活用することをお勧めいたします。
執筆者紹介
吉田 彩乃 社会保険労務士法人ザイムパートナーズ
大学在学中に社会保険労務士試験合格。一般企業にて人事労務職を経験後、ザイムパートナーズに入所。現在は、副代表に就任し、派遣会社をメインに労務相談、就業規則、教育訓練、派遣許可・更新申請等に関するコンサルティング業務を担当。
社会保険労務士法人ザイムパートナーズ