6月30日提出!労働者派遣事業報告書の作成方法と活用法とは
2019/05/17
今年も労働者派遣事業報告書(以下、「事業報告書」といいます。)提出の時期が近づいて参りました。
派遣事業者にとっては、大変煩雑な作業であるという声をよく耳にします。
今回は、事業報告書の作成方法と活用法についてご案内いたします。
目次
労働者派遣事業報告書とは?
派遣法は、毎年6月末日までに、事業報告書を都道府県労働局に提出することを義務付けています。
この事業報告書は、単なる統計調査ではありません。
事業報告書を提出期限までに提出しない、または虚偽の報告をした場合は、30万円以下の罰金に処せられる場合があり、併せて派遣許可の取り消しの対象になることがあります。
「社会保険未加入者がいるけど全員加入していることにしておこう」とか、「教育訓練実施してないけど実施したことにしておこう」という安易な考えで事業報告書を作成し、提出してしまうと、後で後悔することになりますので、事実を正直に報告しましょう。
労働者派遣事業報告書の作成方法
事業報告書を作成するには、主に以下の資料を用意する必要があります。
- 直近の決算報告書
- 労働者派遣事業個別契約書
- 雇入れ時又は配置転換時の安全衛生教育実施記録
- 派遣元管理台帳(キャリアアップ教育、雇用安定措置)
- その他の教育訓練実施記録
- 総勘定元帳(派遣先事業主取引額確認の為)
- 派遣料金請求書
- 雇用保険、社会保険通知書等
上記書類を参考に報告書を作成するわけですが、注意すべき点も多々あります。
この機に、適正に派遣事業の運営ができているか、確認してみましょう。
① 禁止業務に派遣していないか?
業務別派遣料金及び派遣労働者の賃金、業務別派遣労働者の実人数記載欄には、日本標準職業分類(中分類)に基づく職種に基づき、該当する派遣労働者が従事した業務の種類別に応じた実績を記載するわけですが、ここには派遣禁止業務や紹介予定派遣や産前産後休業の代替等の場合にのみ限定して派遣が認められている業種も含まれています。
② 日雇派遣できない人を日雇派遣していないか?
日雇派遣は、規定の業務または人(高齢者、中間学生、年収500万円以上の者が副業する場合、世帯年収が500万円以上で主たる生計者以外の者)のみ、派遣できます。
③ 事業所単位・個人単位の期間制限を超えて派遣していないか?
事業報告書には、労働者派遣契約の期間別件数を記載する項目があります。
有期契約労働 者のみ(高齢者を除く。)雇用しているのに、1回の労働者派遣契約の期間が「3年を超えるもの」に数値の記載があると、抵触日違反の可能性があります。
④ 雇用安定措置を適正に実施しているか?
平成27年の改正派遣法施行から3年が経過しました。
雇用安定措置記載欄には、対象派遣労働者数と措置を講じた人数、措置を講じなかった人数を記載する項目があります。
措置を講じないと、派遣許可取消や事業停止命令が下される可能性があります。
⑤ キャリアアップ教育を適正に実施しているか?
派遣事業者は、雇入れ4年未満の派遣労働者に、有給かつ無償で、年に8時間以上のキャリアアップ教育を実施する義務があります。
事業報告書には、対象派遣労働者数と実績をそれぞれ記載する必要があり、平均実施時間が8時間を下回っていると、義務違反であることが一目瞭然でわかってしまいます。
労働者派遣事業報告書の活用方法
事業報告書を作成し終えたら、もう一仕事あります。
派遣事業者は、派遣労働者や派遣先が良質な派遣事業者を適切に選択できるよう、インターネット等により情報提供することを義務付けています。
具体的には、以下の項目の情報提供が必要です。
- 労働者派遣の実績(派遣労働者数、派遣先事業所数)
- マージン率(派遣料金の平均、派遣労働者の賃金平均を含む。)
- 教育訓練に関する事項
- 雇用安定措置を講じた人数等の実績(情報提供することが望ましい)
特に、マージン率の情報提供は、常時インターネットの利用により広く情報提供することが原則とされてます。
自社のホームページがある場合は掲載を、自社のホームページが無い場合は、厚生労働省の人材サービス総合サイトに掲載すると良いでしょう。
世間相場と比較してみよう
事業報告書は、毎年厚生労働省が集計して、結果を発表しています。
集計に時間を要すためタイムラグはありますが、自社の実情と比較するのに良い資料です。
参考)平成29年度 労働者派遣事業報告書の集計結果
https://www.mhlw.go.jp/content/11654000/000496801.pdf
自社の派遣売上高は、どのランクに位置づけされるか、業種別の派遣料金・派遣労働者の賃金の平均値や個別契約期間の割合なども掲載されています。
世間相場と比較し、事業運営に役立てましょう。
まとめ
事業報告書の作成は、とても煩雑な作業ですが、自社を見つめなおす良い機会でもあります。
また、来年以降は派遣法改正により、同一労働同一賃金の労使協定方式を採用する派遣会社は、さらに細かな報告が必要となります。
既に厚生労働省のホームページに改定後の様式が掲載されていますので、事前にチェックし、集計時に慌てることの無いよう対策を講じておくと良いでしょう。
執筆者紹介
吉田 彩乃 社会保険労務士法人ザイムパートナーズ
大学在学中に社会保険労務士試験合格。一般企業にて人事労務職を経験後、ザイムパートナーズに入所。現在は、副代表に就任し、派遣会社をメインに労務相談、就業規則、教育訓練、派遣許可・更新申請等に関するコンサルティング業務を担当。
社会保険労務士法人ザイムパートナーズ