同一労働同一賃金~派遣先均等・均衡方式確認事項について~
2020/03/12
いよいよ4月より、改正派遣法が施行されます。
今回は、派遣先均等・均衡方式の事前確認事項についてご案内いたします。
目次
確認事項1 派遣先の比較対象労働者の選定は適切ですか?
比較対象労働者は、原則として派遣先の通常の労働者(いわゆる正社員)です。
派遣先は比較対象労働者の選定にあたり、次の項目について職務内容等の洗い出しが必要です。
- ①期間の定めの有無
- ②労働時間(フルタイムorパートタイム)
- ③従事する業務の具体的内容(所属部署、主たる業務、付随的業務)
- ④責任の程度(レベル(職務等級等)、目標、ノルマ、所定外労働)
- ⑤従事する業務の変更範囲(異動範囲)、異動頻度
- ⑥責任の変更の範囲(昇進昇格の上限など)
- ⑦配置転換の範囲(勤務地変更、頻度)
- ⑧その他の事情
各雇用形態別に、上記の①から⑧を洗い出したうえで、どの雇用形態が最も近いのかを比較していきます。
★派遣先の短時間または有期契約労働者を比較対象にする場合は、「派遣先の通常の労働者との間で短時間・有期雇用労働法等に基づく均衡が確保されている者」に限られることに注意が必要です。
中小企業の有期雇用労働法の施行は来年4月ですが、現時点で均衡が確保されていない場合は、比較対象労働者とすることができません。
その際は、派遣先の「通常の労働者」と比較することになります。
その場合、職務内容や配置の変更の範囲が異なることになりますので、その違いについて均衡が確保されていればOKです。
なお、派遣先の雇用形態ではどの区分にも該当しない場合もあると思われます。
その際は、「仮想の通常の労働者」を比較対象労働者にするわけですが、この場合でも「派遣先の通常の労働者との間で適切な待遇が確保されている者」に限られますので、ご留意ください。
また、「仮想の有期契約労働者」は比較対象労働者に選定することはNGです。
確認事項2 比較対象労働者の待遇等に関する情報提供は、業務内容ごとに選定されていますか?
派遣先に複数人派遣する場合、派遣労働者の業務内容が異なれば、その種類ごとに比較対象労働者の選定が必要です。
また、派遣労働者1人が複数の業務を行う場合は、その業務ごとに比較対象労働者を選定し、情報提供が必要です。
そのため、一つの派遣契約に対し、複数人の比較対象労働者の情報提供がある場合があります。
なお、比較対象労働者の情報提供は、契約更新の都度必要であることも留意しましょう。
但し、待遇に関する変更が無い場合は「令和○年○月○日付けの情報提供から変更がない」旨を書面の交付またはFAX、メール等による通知で良いとされています。
確認事項3 福利厚生施設の利用機会は派遣先の通常の労働者と同じ条件ですか?
更衣室や休憩所、給食施設等において、派遣労働者も派遣先の正社員と同じように使えるか、使えない場合はその理由が妥当なものか、確認する必要がございます。
また、給食施設の料金においても、派遣元は派遣先との均等・均衡を確保するため、派遣先の正社員と同じ料金にする必要があることにも注意が必要です。
確認事項4 派遣労働者への雇入れ時の待遇情報の明示及び説明事項は準備してますか?
派遣労働者を雇い入れた場合は、次の事項を説明する必要があります。
・派遣先均等・均衡方式によりどのような措置を講ずるか
・職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項を勘案してどのように賃金決定するか
説明は、派遣労働者が措置の内容を理解できるよう、書面を活用し、「口頭により行うことが基本」とされてることにも注意です。
なお、派遣労働者が有期雇用契約の場合は、労働契約の更新をもって雇い入れることになるため、「労働契約の更新の都度」派遣法第31条の2第2項に基づく雇入れ時の待遇情報の明示及び説明が必要となることに注意が必要です。
確認事項5 派遣時の待遇情報の明示及び説明事項は準備していますか?
派遣時には、次の事項を説明する必要があります。
・ 派遣先均等・均衡方式によりどのような措置を講ずるか、
・ 職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項を勘案してどのように賃金決定するか
確認事項4と同じ内容のため、雇入れ時(更新時)と派遣時が同じタイミングであれば、まとめて行えば事足ります。
また、派遣労働者から求めがあった際は、次の事項を説明する必要があります。
- ①派遣労働者及び比較対象労働者の待遇のそれぞれを決定するに当たって考慮した事項の相違の有無
- ②「派遣労働者及び比較対象労働者の待遇の個別具体的な内容」又は「派遣労働者及び比較対象労働者の待遇の実施基準」
- 派遣労働者及び比較対象労働者の職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、待遇の性質及び待遇を行う目的に照らして適切と認められるものに基づき、待遇の相違の理由
<待遇の相違の内容>
<待遇の相違の理由>
労使協定方式とは異なり、派遣先均等・均衡方式は、派遣先毎に待遇が異なるため、派遣労働者が納得できるように、説明を求められたときの対応を準備しておかれることをお勧めいたします。
執筆者紹介
吉田 彩乃 社会保険労務士法人ザイムパートナーズ
大学在学中に社会保険労務士試験合格。一般企業にて人事労務職を経験後、ザイムパートナーズに入所。現在は、副代表に就任し、派遣会社をメインに労務相談、就業規則、教育訓練、派遣許可・更新申請等に関するコンサルティング業務を担当。
社会保険労務士法人ザイムパートナーズ