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派遣先均等均衡方式に関するQ&A

2020/01/21

派遣先均等均衡方式

令和元年12月26日に、派遣先均等・均衡方式に関するQ&Aが公表されました。
 
今回は、このQ&Aについてご案内致します。

比較対象労働者の待遇等に関する情報提供の運用ルール

派遣先均等・均衡方式を採用する場合、労働者派遣個別契約書締結前に、派遣先から比較対象労働者の待遇等に関する情報提供を受けた後でなければ、派遣契約(労働者派遣個別契約)を締結することができません。
 
この場合の比較対象労働者をどのように選定すれば良いか、迷われる方も多いと思われます。
 
比較対象労働者は、原則として以下の順位で選定します。

 

 

※比較対象労働者となる短時間・有期雇用労働者は、通常の労働者との間で短時間・有期雇用労働法等に基づく均衡が確保されている者に限られます。
 
(中小企業事業主は、2021年3月31日までの間はパートタイム労働法及び労働契約法が適用されます。)

 

上記の表に完全に一致すれば悩む必要は無いのですが、全く同じケースは少ないです。
 
例えば、同じ職務の内容でも、派遣労働者が1人で複数の業務を行う場合などが想定されます。
 
その場合は、その業務ごとに比較対象労働者の待遇に関する情報提供が必要となりますので、注意が必要です。(派遣先均等・均衡方式に関するQ&A問1-1)

 

また、一つの派遣契約で複数人を同職種(業務)に派遣する場合はどうでしょうか?
 
派遣労働者が行う業務の内容や配置等の変更の範囲が完全に一致していれば良いですが、比較対象労働者の年齢・経験等により待遇に差があれば、それぞれに応じた比較対象労働者の待遇情報の提供が必要になります。(派遣先均等・均衡方式に関するQ&A問1-4)

 

なお、人事制度により比較対象労働者の待遇が変わった場合は、遅滞なく派遣元へ情報提供が必要です。(派遣契約終了日前1週間以内の場合を除く。)
 
比較対象労働者の待遇には、給与だけでなく、出張旅費の変更や通勤手当の上限変更等の場合もその都度情報提供が必要です。(派遣先均等・均衡方式に関するQ&A問1-14)

 

比較対象労働者の待遇等に関する情報提供は、派遣契約更新の場合も原則として必要ですが、従前に提供した情報に変更が無ければ、「令和〇年〇月〇日付けの情報提供から変更が無い」旨を書面の交付またはFAX、メール等により情報提供することで差し支えないとされています。(派遣先均等・均衡方式に関するQ&A問1-6)

 

比較対象労働者の待遇等に関する情報は、派遣先・派遣元ともに労働者派遣が終了した日から起算して3年を経過する日まで保存義務があることもご承知おきください。

 

仮想の通常の労働者とは

派遣先に、比較対象労働者がいない場合、「仮想の通常の労働者」を比較対象とすることができます。
 
但し、無条件に何でも良いというわけではありません。

 

仮想の通常の労働者の待遇は、実際に雇い入れた場合の待遇であることを証する一定の根拠に基づき決定されていることが必要であるとされており、「一定の根拠」とは、適用実績はないが、就業規則等に仮に雇入れるとすれば適用される待遇が示されており、他の通常の労働者との間で適切な待遇が確保されている必要があります。
 
ここでいう「適切な待遇が確保されている」とは、「職務の内容」、「職務の内容及び配置の変更の範囲」等を考慮し、客観的・具体的な実態に照らして不合理でないことについて、派遣元に説明できる状態であることをいいます。

 

また、他の通常の労働者が等しく適用される賃金テーブルや諸手当があれば、当然仮想の通常の労働者も適用を受けるはずです。
 
派遣先は、仮想だからといって、安易に低廉な待遇にしてしまうと派遣法26条第7項違反として、都道府県労働局長による勧告及び公表の対象となる可能性があります。

 

因みに、「仮想の通常の労働者」は良くても、「仮想の短時間・有期雇用労働者」を比較対象労働者とすることは認められません。(派遣先均等・均衡方式に関するQ&A問1-8)
仮想の通常の労働者の適用をお考えの場合は、ご留意ください。

まとめ

派遣労働者の待遇が整備された労使協定方式に対し、派遣先均等・均衡方式は、派遣先の労働者の待遇が整備されていないと比較対象労働者を選定することができません。
 
今回の法改正は、派遣先均等・均衡方式が原則であり、労使協定方式はあくまでも例外規定です。
 
この機に、派遣元だけでなく派遣先も、労働者の待遇を整備することをお勧めいたします。

 

執筆者紹介

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吉田 彩乃  社会保険労務士法人ザイムパートナーズ

大学在学中に社会保険労務士試験合格。一般企業にて人事労務職を経験後、ザイムパートナーズに入所。現在は、副代表に就任し、派遣会社をメインに労務相談、就業規則、教育訓練、派遣許可・更新申請等に関するコンサルティング業務を担当。
社会保険労務士法人ザイムパートナーズ

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