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働き方改革の産業医・産業保健機能の強化でどう変わる?
企業が取るべき対応とは。

2019/04/11

産業保険機能強化

2019年4月1日より労働安全衛生法が改正され、「産業医・産業保健機能」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されました。
 
派遣会社として、どのように対応すべきか、ご案内致します。

 

産業医・産業保健機能の強化

長時間労働の状況や労働者の業務の状況など産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために、産業医による面接指導や健康相談等の実施を確実に行うことが求められています。
 

    そもそも、産業医とは?
    産業医とは、事業場において労働者の健康管理等について、専門的な立場から指導・助言を行う医師を言います。労働安全衛生法により、常時50人以上の労働者を使用する事業場には、産業医の選任が義務付けられています。派遣会社の場合、派遣労働者が所属する事業所で常時50人以上派遣労働者を雇用している場合に選任義務が生じます。

具体的に、何が変わるの?

Point1 事業者は、産業医に対して、次の3点の情報を提供する義務があります。

(1)①健康診断、②長時間労働者に対する面接指導、③ストレスチェックに基づく面接指導実施後の既に講じた措置又は講じようとする措置の内容に関する情報(措置を講じない場合は、その旨・その理由)
 
【提供時期】①~③の結果について医師又は歯科医師からの意見聴取を行った後、遅滞なく情報提供する。
 
 
(2)時間外・休日労働時間が1ヶ月当たり80時間を超えた労働者の氏名・当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報
 
【提供時期】当該超えた時間の算定を行った後、速やかに(概ね2週間以内)に提供
 
 
(3)労働者の業務に関する情報であって産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるもの
 
【提供時期】産業医から当該情報の提供を求められた後、速やかに提供
 
 
※なお、労働者数が50人未満の事業場の事業者は、努力義務です。
 
事業者からの情報提供に対し、産業医は、必要な場合は事業者に対し、勧告をすることができます。
 
事業者は、勧告を受けた後遅滞なく、勧告の内容、勧告を踏まえて講じた措置又は講じようとする措置の内容を衛生委員会に報告しなければなりません。
 
産業医からの勧告の内容・措置の内容、安全衛生委員会等の議事録は、3年間保存が必要です。
 

Point2 産業医の業務内容の周知が義務付けられます。

産業医を選任した事業者は、産業医の業務の具体的な内容や産業医に対する健康相談の申出の方法、産業医による労働者の心身の状態に関する情報の取扱いの方法を労働者に周知させる必要があります。
 
周知方法は、次の3つです。
 
(1)常時各作業場の見やすい場所に掲示し、備え付け
(2)書面を労働者に交付
(3)磁気テープ、磁気ディスク等に記録し、かつ各作業場に労働者が常時確認できる機器を設置
 
派遣社員に周知させる場合は、(2)が適当と思われます。派遣先の事業場に備え付けることは難しいため、就業条件明示書と一緒に交付することが現実的な対応でしょう。

長時間労働者に対する面接指導等

Point1 自己申告制は是正勧告の対象!?

長時間労働者に対する面接指導を実施するため、タイムカード等による客観的な記録方法で時間管理することが義務付けられました。
 
したがって、タイムカード等を採用せず、労働者自身の申告のみに任せる自己申告制を採用している会社は、法令違反として是正勧告の対象となります。
 
まだ導入していない場合は、すぐにでも対応が必要です。
 
客観的な記録の管理方法は、次のとおりです。
 
(1)タイムカードの記録
(2)パソコン等の電子計算機の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録
(3)事業者の現認
(4)ICカード等の入退室時刻の記録 等
 
★派遣労働者の労働時間は、派遣先が労働時間の状況の把握が必要です。派遣先でタイムカード等を導入していない場合は、出退勤の都度、派遣先の指揮命令者等に確認してもらうことが必要です。

 

Point2 裁量労働制の適用者や管理監督者も時間管理が必要!?

残業や休日労働の概念が無い管理監督者や業務遂行方法が労働者の裁量に委ねられている裁量労働制の適用者も、時間管理が必要になりました。

 

Point3 1ヶ月の休日・残業時間が80時間を超えた場合は、本人へ通知が必要です。

疲労の蓄積が認められる労働者に、面接指導の申出を促すため、労働者本人への通知が必要です。労働時間だけでなく、面接指導の実施案内等と併せて行うと良いでしょう。

 

Point4 医師の面接指導が必要な場合とは?

面接指導の対象となる労働者の要件が変わりました。

 

    ①一般労働者(管理監督者含む)
    【改正前】時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者からの申出を受けた場合
     
    【改正後】時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者からの申出を受けた場合

 

    ②研究開発業務
    【改正前】規定なし
     
    【改正後】時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超えた場合は、労働者からの申出に関わらず面接指導が義務化されました。(実施しない場合は、50万円以下の罰金対象に)

 

    ③高度プロフェッショナル
    【改正前】規定なし
     
    【改正後】健康管理時間(「事業場内に所在していた時間」と「事業場外で業務に従事した場合における労働時間」との合計)が1月当たり100時間を超えた場合は、労働者からの申出に関わらず面接指導が義務化されました。(実施しない場合は、50万円以下の罰金対象に)

 

まとめ

働き方改革により、労働者の時間管理が厳格化されています。
 
派遣労働者の時間管理は、売り上げに直結するため整備されているところがほとんどと思われますが、内勤社員(特に営業職)は、タイムカードを用いず、自己申告に基づく時間管理をしているケースも多い様です。
 
管理監督者も勤怠管理をしていない会社も多い状況です。
 
また、客観的な記録の管理方法を導入していない場合、直行直帰という理由だけでは足らず、社外から社内システムにアクセス可能であったり、勤怠管理アプリなどを導入していると、「管理できる状況なのに管理していない」と判断され、是正指導の対象になります。
 
最近は、社外からでも個人のスマホから打刻できる勤怠管理アプリなども多く出ています。
費用も比較的安価ですし、GPS機能付きなので、不正できないよう考慮されています。
 
デジタル機器を活用して、労働者の健康管理を強化し、健康障害のリスクを低減させていきましょう。
 

執筆者紹介

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吉田 彩乃  社会保険労務士法人ザイムパートナーズ

大学在学中に社会保険労務士試験合格。一般企業にて人事労務職を経験後、ザイムパートナーズに入所。現在は、副代表に就任し、派遣会社をメインに労務相談、就業規則、教育訓練、派遣許可・更新申請等に関するコンサルティング業務を担当。
社会保険労務士法人ザイムパートナーズ

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