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労使協定方式に関するQ&A【第2集】その2

2019/11/27

労使協定方式に関するQ&A【第2集】

前回に引き続き、今回も、令和元年11月1日に公表された労使協定方式に関するQ&Aについてご紹介いたします。
 
第2回目は、2.基本給・賞与・手当等、についていくつかピックアップします。

事業所について

労使協定方式では、現在の派遣社員の基本給・賞与・手当等を時給換算し、局長通知の額と比較する必要があります。
 
具体的には、①職種別の基準値×②能力・経験調整指数×③地域指数によって、算出した賃金を比較する訳ですが、特に③の地域指数の算出根拠となる「事業所」について多く疑問が寄せられた模様です。
 

問2-2 派遣元事業主が地域指数を選択する際、「派遣先の事業所その他派遣就業の場所」は具体的にどのように判断すればよいか。

 

答 「派遣先の事業所その他派遣就業の場所」については、工場、事務所、店舗等、場所的に他の事業所その他の場所から独立していること、経営の単位として人事、経理、指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有すること、一定期間継続し、施設としての持続性を有する事等の観点から実態に即して判断することとなり、常に雇用保険の適用事業所と同一であるわけではない。

 

ちなみに、派遣先の事業所単位の期間制限における「事業所」に関しては、以下とされています。

 

~労働者派遣事業関係業務取扱要領(2020年4月1日以降)の第8の5~
ハ 事業所とは、雇用保険法等雇用関係法令における概念と同様のものであり、出張所、支所等で、規模が小さく、その上部機関等との組織的関連ないし事務能力からみて一の事業所という程度の独立性がないものについては、直近上位の組織に包括して全体を一の事業所として取り扱う。
その他派遣就業の場所とは、事業を行っていない者が派遣先となる場合に当該労働者派遣の役務の提供を受ける場所を指し、例えば、個人宅が派遣先になる場合は当該家庭(居宅)を、大学の研 究室が派遣先になる場合は、当該研究室を指す。

 

~平成27年9月30日施行の改正労働者派遣法に関するQ&A[第2集]~
Q7:派遣先の事業所単位の期間制限について、この「事業所」とは、雇用保険の適用事業所に関する考え方と基本的に同一であるというが、雇用保険の非該当承認を受けている事業所の扱い如何。
 
A7:雇用保険での事業所非該当承認を受けているということは、一の事業所としての独立性を有していないことを派遣先自ら認めていることを意味するため、原則、新法の期間制限を受ける事業所単位の事業所としては認められない。こうした一の事業所としての独立性がないものについては、直近上位の組織に包括して全体を一の事業所として取り扱うこととなる。

 

派遣先の事業所単位の期間制限における「事業所」は、雇用保険の非該当承認を受けている事業所を否定していることに対し、地域指数における「事業所」は、非該当承認を受けている事業所を認めているかのように見受けられますが、そうではありません。
 
★実態が独立した事業所なら、地域指数における「事業所」として認める
 =(イコール)本来は適用事業所だけど非該当承認を受けている「事業所」も認める
という意味です。
 
したがって、地域指数における「事業所」は、事業所単位の期間制限における「事業所」と同義であると理解して良いでしょう。
 
なお、派遣先の事業所は、労働局から非該当承認ではなく「適用事業所」として手続きをするよう、指導を受ける可能性がありますので、ご留意ください。

 

賃金テーブルについて

「現在適用している賃金テーブルを局長通達の水準に合わせるには、どうしたらよいか?」
「局長通達の水準に合わせるために、賃金テーブルの変更が必要なのか?」
と疑問に感じられた方もいらっしゃると思われます。
 
こういった派遣会社の実情を踏まえて厚生労働省は以下のように回答しています。

 

問2-4 賃金テーブル上、職務のレベルに応じて等級を設けるとともに、昇級レンジとして号棒を設けている。その際の能力・経験調整指数の当てはめ方はどうなるのか。

 

答 基本的に労使で議論し決定するものであるが、例えば、各等級に属する派遣労働者が従事する業務の内容、難易度等が、一般の労働者の勤続何年目に相当するかを判断していただいたうえで、法第 30条の4第1項第2号ロ(※)の対応として、号俸の中で賃金を向上させることが考えられる。
 そのほか、号俸の中で、業務の内容、難易度等のレベルに差がある場合は、例えば、1級1号俸~5号俸の派遣労働者を基準値(0年目)とし、1級6号俸~10号俸の派遣労働者を1年目相当とするように、同じ等級の中で能力・経験調整指数の当てはめ方を変えることも考えられる。
※ 派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項の向上があった場合に賃金が改善されるものであること。

 

法第30条の4第1項第2号ロの要件をクリアするためには、労使協定書に以下のように記載しましょう。

 

例)
別表〇の各等級の職務と別表〇の同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額との対応関係は次のとおりとすること
 C等級1号棒~3号棒:基準値(0年目)相当
 B等級1号棒~3号棒:3年目相当
 A等級1号棒~3号棒:10年目相当

 

別表〇 対象従業員の基本給の額

 

 

A~Cの縦の等級は、従事する業務が一般労働者の勤続何年目に相当するかの能力・経験調整指数を踏まえ、横の号棒ランクで昇給レンジとして法第30条の4第1項第2号ロの要件を満たすものとして使います。
 
能力・経験調整指数の年数は勤続年数とイコールではありません。
 
職務の内容自体が向上しているわけではないのであれば、経験年数を踏まえて、1~3号棒レンジで昇給させることで、法30条の4第1項第2号ロに対応するものとして運用していくことが望ましいでしょう。
 
もちろん、職務の内容に向上があれば、経験年数を踏まえる横の等級ではなく、縦の等級で賃金を見直すことになります。

 

賃金テーブルの作成自体は難しくないのですが、能力の向上や評価が良かった際に賃上げ部分の派遣料金を確保できるかが、今後の課題となります。
 
派遣会社の交渉力が問われます。
 
労使協定方式を導入する場合は、派遣先が期待するレベル、派遣料金アップの条件などもヒアリングして、評価制度や賃金テーブルの作成が必要となるでしょう。

 

執筆者紹介

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伊藤 剛  社会保険労務士法人ザイムパートナーズ

大学卒業後、大手派遣会社にて人材派遣の営業職を経験し、社会保険労務士試験に1発合格。合格後ザイムパートナーズに入所。現在は労働者派遣事業許可申請支援、給与計算、労務手続、労務相談など多岐にわたる社会保険労務士業務に従事。
社会保険労務士法人ザイムパートナーズ

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