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パワハラ防止措置義務化、派遣会社が取るべき対応とは?

2019/05/10

勤務間インターバル制度とは

平成31年4月24日、職場のパワーハラスメント防止義務を新設する法案が賛成多数で可決されました。
 
法案はこれから修正が入るものの義務化が現実的になってきました。
 
今回は、職場のパワーハラスメントについてご案内いたします。

 

職場のパワーハラスメントの定義

職場のパワーハラスメントの定義については、「女性の職業生活における活躍の推進及び職場のハラスメント防止対策等の在り方について(報告書案)」に示されています。

 

  • ① 優越的な関係に基づく
  • ② 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
  • ③ 労働者の就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)

 

また、ワーキング・グループの報告では、「職場のパワーハラスメントに当たりうる行為のすべてを網羅するものではなく、これ以外の行為は問題ないということではない」と留保した上で、職場のパワーハラスメントの行為類型として、以下の6つの類型を挙げています。

 

  • ⅰ 暴行・傷害(身体的な攻撃)
  • ⅱ 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
  • ⅲ 隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
  • ⅳ 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
  • ⅴ 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
  • ⅵ 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

 

①の「優越的な関係」とは、職務上の地位に限らず、人間関係や専門知識、経験などの様々な優位性が含まれます。
 
上司から部下へのいじめ・嫌がらせだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、または部下から上司に対して行われるものもあります。

 

実務上問題になりやすいのは、②の業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動か否かです。
 
上司は、自らの職位・職能に応じて権限を発揮し、業務上の指揮命令や指導教育を行う役割を遂行することが求められます。
 
ですが、業務上の必要な指示や注意・指導を不満に感じた人が「上司にパワハラを受けた」と訴えるケースが少なくありません。
 
「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書(平成30年3月)」には、この要素に当てはまる主な例として、次のような行為が考えられるとしています。

 

  • 業務上明らかに必要性のない行為
  • 業務の目的を大きく逸脱した行為
  • 業務を遂行するための手段として不適当な行為
  • 当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える行為

 

しかしながら、業種、業態、職務、当該事案に至る経緯や状況によって業務の適正範囲が異なるとの意見も示されています。
 
具体的には、職務内容が危険を伴う業務であるか通常のオフィスワークであるか、注意の対象者が新人かベテランかなど、明確な統一的なルールを設けるのは難しく、結局は事案ごとに判断せざるを得ません。

 

義務化により、企業が対応しなければならないこと

義務化により、企業に対して、パワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置義務(相談体制の整備等)を講じ、併せて措置の適切・有効な実施を図るための指針の根拠規定を整備することが求められます。

 

政府は、法案成立後、職場のパワーハラスメントの定義や事業主が講ずべき措置の具体的内容等を示す指針を定めることとしています。
 
報告書案によりますと、指針において示すべき事項について、以下の記載があります。

 

    ★事業主が講ずべき措置等の具体的内容について

  • 事業主における、職場のパワーハラスメントがあってはならない旨の方針の明確化や、当該行為が確認された場合には厳正に対処する旨の方針やその対処の内容についての就業規則等への規定、それらの周知・啓発等の実施
  • 相談等に適切に対応するために必要な体制の整備(本人が萎縮するなどして相談を躊躇する例もあることに留意すべきこと)
  • 事後の迅速、適切な対応(相談者等からの丁寧な事実確認等)
  • 相談者・行為者等のプライバシーの保護等併せて講ずべき措置
  •  

    ★事業主が講ずることが望ましい取組について

  • 職場のパワーハラスメント発生の要因を解消するための取組(コミュニケーションの円滑化、職場環境の改善等)
  • 取引先等の労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関する相談対応等の取組

 

まずは、就業規則や諸規程など、企業内ルールを策定し、相談体制を整備することが必要です。
 
次に、パワーハラスメントに関する相談があった場合は適切に対応し、解決に向けて措置を講ずることが求められます。
 
さらに、防止措置として、社内教育などを行うことが望ましいでしょう。
 
なお、労働施策総合推進法などの改正によるパワーハラスメント防止措置の義務付けでは、大企業は公布日から1年以内とし、令和2年4月施行予定としています。
 
また、中小企業には猶予期間を設定し、公布日から3年を超えない範囲内で義務化し、それまでは努力義務にすることとしています。

 

執筆者紹介

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吉田 彩乃  社会保険労務士法人ザイムパートナーズ

大学在学中に社会保険労務士試験合格。一般企業にて人事労務職を経験後、ザイムパートナーズに入所。現在は、副代表に就任し、派遣会社をメインに労務相談、就業規則、教育訓練、派遣許可・更新申請等に関するコンサルティング業務を担当。
社会保険労務士法人ザイムパートナーズ

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